e文庫 地球樹の女神シリーズ



作品紹介



■ストーリー
 豪華客船“さんらいず”の失跡、それは破滅への予兆だった――。超知性を具えた観葉植物“フィロデンドロン教授”と交流する天才少女・後藤由紀子は、同じ中学に通う超不良問題児・四騎忍に恋してしまう。だが、彼こそは、情報企業を陰から操り、世界支配の座を取って替わらんとする、悪魔のプリンスだった!
 邪悪な闇政府の魔の手に囚われた由紀子の救出を四騎忍が決意するとき、世界は新たな局面を迎える……。イザナミとイザナギの恋は、世界を終わらせ、新生させる。無軌道美人教師・御子神真名、ゴロツキ新聞記者・荒気衛、謎の爆裂娘・禅鬼修羅ら、ひとクセもふたクセもある連中を巻き込んで繰り広げる、ハチャメチャで、ミステリアスで、そしてロマンチックな、ラストハルマゲドン・ストーリー。

■解説
 平井和正の処女作は、中学時代に書き上げた『消えたX』である。南極帝国を支配する悪魔教の使徒が、超兵器を用いて全人類に服従か破滅かを迫るという、この未発表の処女長編は、SF作家にしてエンターテイナーである平井和正の原点と言えるだろう。この『消えたX』を母胎に、『地球樹の女神』は生まれた。
 一見、コミックタッチのムードに彩られたこの作品の蔵する意味は、危険なまでに神秘的だ。モーゼの聖櫃、魔の海域、日ユ同祖論、安倍晴明、東北UFO基地……オカルトマニアならずとも一度は耳にしたであろう怪奇タームの数々が随所に散りばめられ、また、キーワードとなる。とりわけ、主人公・四騎忍の過去世にまつわる疑惑は、近代史のタブーにも触れる概念さえ孕んでいる。この作品が平井和正最大の問題作と言われる所以である。
 だが、『地球樹の女神』の神秘性を語るうえで、そうした神秘的要素を内包していること自体は、大した比重を持たない。むしろ、この作品の神秘性は、物語の構造そのものにこそあると言えるだろう。その何たるかは、実際に読んでみれば、自ずと明らかとなろう。鷹匠中学の愉快な仲間達と、神秘のワンダーランドの冒険をあなたも共にするはずだ。
 さて、『地球樹の女神』の出版には、不運な経緯がある。最初のカドカワノベルズ版は、6巻で中断。次に徳間書店より、単行本全13巻が刊行されたが、これを書いている現在、全て揃ったバージョンはこれのみである。その後、アスペクトノベルズから刊行されたものの、これも6巻で中断している。
 なお徳間版において、あとがき「書きたくない小説のこと」の中で、書きたくない小説の実例として書いた小編が、やがて巻末連載となり、本編のアナザー・ストーリーへと発展している。
 e文庫では、地球樹の女神全巻を収録したCD-ROM『地球樹の女神 -最終版-』を販売。徳間書店版全13巻のうち、「真昼の魔女」と「鷹は自由に」が合本として刊行されたPART1を、オリジナルどおり分冊として、全14巻として収録している。特典として「書きたかった小説と書きたくなかった小説のこと」と、四騎忍が幻魔大戦の世界を訪れるアナザーストーリー「その日の午後、砲台山で」も付属した。
 なお姉妹篇として、『地球樹の女神』のエッセンスを凝縮し、映画一本分相当のストーリーにアレンジした、泉谷あゆみ作画によるコミック『クリスタル・チャイルド』がある。徳間書店より1995年に上下2巻が刊行されている。
 ほかに、『地球樹の女神』本編とは別世界の後藤由紀子を描いた、小説『クリスタル・チャイルド』がある(コミック『クリスタル・チャイルド』とも内容が異なる)。この作品は、インターネットでのデジタルノベル販売に先駆け、1997年に章毎にPDFによって連載され、現在e文庫より全一巻がリリースされている。


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©Kazumasa Hirai, LUNATECH